運命とは必然なもの
07
「ボス、調べ物が終わりました。」
『エルリック』というファミリーネイムが気になった俺は部下であるリザ・ホークアイに調べてもらっていた。
「報告を。」
「はい。『エルリック』とは10年前、部下の1人が標的を間違え誤って殺害してしまった者達のファミリーネイムです。名前はホーエンハイ
ム・エルリック、妻のトリシャ・エルリック、そして娘のエドワード・エルリックです。この者は亡くなってはおりませんが手足をなくしたそうです。」
「それは本当か?」
「はい。恐らくこの娘が敵の国家錬金術師に間違いないかと。」
「だろうな。国家錬金術師になった理由も多分俺達への復讐だろう。だが、そいつは別件でもうすでに死んでいる。彼女の復讐の相手
は俺となる。」
「だが、我々もあなたを殺されるわけにはまいりません。」
「ああ。それはわかっている。俺も殺されるつもりはない。」
「では、どうするので?」
「・・・・・・。」
「ボス?」
「・・・・・・・俺はエドが好きだ。愛しているのかもしれない。初めて会ったあの時なんて綺麗な子なんだろうと思った。次に会った時は、な
んて輝いている子なんだろうと思った。俺と違って。本当は今すぐにでもエドの元へ行ってこの気持ちを伝えたいところだが、このマフィ
アのボスという立場がそれを邪魔する。俺と彼女は所詮敵同士の運命だったのさ。」
「・・・・・ボス。あなたの気持ちはよくわかりました。ボスとしてのあなたはそれでいいかもしれませんが、ロイという1人の人間としてはど
うなのですか?それにお忘れですか?このマフィアを作った理由を。軍のやり方が気に入らなかったからではなかったのですか。しか
も、国家錬金術師の。」
「忘れてはいないさ。しかし・・・。」
「ここにいる者全員が軍に恨みがないと言えばそうではありませんが、私達全員、あなたに着いていく決心をしてここにおります。です
から、あなたが出した命令には従うつもりです。例えどんな命令でも・・・。」
「ありがとう。気持ちが楽になったよ。君達には安心して背中を預けれる。俺は決めたよ、例え彼女と敵同士の運命でも俺が変えるよ。」
「はい、その心意気です。では、幹部を集めて作戦会議を開きましょう。皆を集めてきます。」
「ああ、頼む。」
「では、失礼します。」
そして彼女は皆を集める為にこの場を去った。
ああ、本当に運命はなんて残酷なんだろう
だが、決めたんだ
例え運命でもこの手で変えてみせる
このまま敵同士でいるという運命の歯車を止めようと決めた
そして彼女を手に入れる
彼女とは戦わなければならない宿命だとしても
彼女と戦うことになるが
必ずこの手に
君といる未来
そう遠くない将来
そしてこの無駄な戦いを終わらす

